プロジェクトの学術的・社会的意義

本プロジェクトは、IRCプロジェクト(2020年度)および、共同利用・共同研究課題「中東・イスラームの歴史と歴史空間の可視化分析——デジタル化時代の学知の共有をめざして」(代表:熊倉和歌子, 副代表:黒木英充, 2020年度〜2022年度)のGIS班による研究の一環である。地理情報空間を伴うデータを公開・共有するには、GISが最も優れたツールとなるが、本プロジェクトで構築したサイトをベースとして、GIS班のデータを蓄積していくことにより、テーマ別にデータを多層化させていくことも可能となる。

この試みは、ビッグデータとGISを本格的に使ったエジプト地域研究の端緒となろう。これまで日本でも、多くのエジプト地域研究がなされ、データ・情報が蓄積されてきた。しかし、その多くは定性的な情報に基づく研究であり、定量的なデータの体系的な収集と分析に基づく研究は遅れている。それは、これまでの日本のエジプト地域研究者の関心によるものであるが、GISを中心とした情報科学の分析手法の採用に熱心ではなかったことが大きい。本プロジェクトメンバーは、多様で膨大な地域研究のデータ・情報を関連付け、体系的に分析するのに、情報科学の分析手法を使った空間分析が有効であるとの認識を共有している。

未来へ向けてのエジプト地域研究への体制整備が急がれる。本プロジェクトでは、大カイロ都市圏を研究対象としている。それは、カイロ都市圏がエジプト社会において決定的な役割を担い、カイロ都市圏の分析抜きには、エジプト社会を理解することは出来ないからである。しかし、現代では、カイロ都市圏の拡大は限界に達し、「地方」の時代が来ようとしている。そのため、本プロジェクトは、カイロ都市圏の今後を見通す試みであるとともに、今後、定量的分析の研究対象をエジプト「地方」へと広げるステップでもある。

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